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2026年7月8日

失敗もSlackに流す——AZOOが「弱さをオープンにする」カルチャーをつくるまで

成功も失敗もオープンに開示する。AZOO(WASIMIL)の多国籍・バイリンガル環境で育った自己開示文化と、失敗共有の具体的なシーンを、採用担当の一人称で描きます。

「失敗、Slackに流しておきますね」——AZOO(プロダクトブランド: WASIMIL)で働いていると、この一言を一日のうちに何度も耳にします。

私たちは京都・下京区の京町家をリノベーションしたオフィスを拠点に、ホテル・宿泊施設向けの管理SaaS「WASIMIL」を開発している少数精鋭のスタートアップです。日本語と英語が日常的に飛び交い、海外在住のメンバーも多い多国籍・バイリンガルなチームで、フロント業務・予約・運営のデジタル化に取り組んでいます。

この記事は、機能の話でも数字の話でもありません。「失敗をオープンにできる会社かどうか」を企業選びの軸に置いている方に向けて、私たちがどんなふうに弱さを見せ合い、失敗を共有し、それを学びに変えているのか——そのカルチャーの中身を、採用担当の私の視点から正直にお伝えしたいと思っています。

採用面談でよく聞かれます。「御社って、失敗したらどうなるんですか」と。その問いに対する私たちの答えを、できるだけ等身大の言葉で書いてみます。

なぜ「失敗を隠す」ことが、いちばんのリスクなのか

スタートアップで働いたことのある方なら、肌感覚で分かっていただけると思います。小さなチームで、まだ世の中にないプロダクトをつくっているとき、最大のリスクは「失敗そのもの」ではありません。失敗が共有されず、誰にも見えないまま放置されることです。

たとえば、あるメンバーがデプロイ(本番環境へのリリース作業)で設定を一つ間違えたとします。本人がそれを恥ずかしいと感じて黙っていたら、どうなるでしょうか。原因の切り分けに無駄な時間がかかり、同じ落とし穴に別のメンバーが翌週はまり、根本対策はいつまでも打たれません。失敗の「隠蔽」は、個人の問題ではなくチーム全体の学習を止めてしまうのです。

私たちはこの構造を、繰り返し痛感してきました。だからこそ、AZOOでは「失敗を早く・小さく・オープンに出す」ことそのものを、評価されるべき行動として扱っています。うまくいったことだけを報告する文化ではなく、つまずいたこと・読み違えたこと・想定外だったことを、むしろ積極的に言語化して共有する。これは美しい理念というより、少人数で速く動き続けるための、極めて実利的な選択です。

失敗を隠せる組織は、短期的には平和に見える。けれど、その平和は「次に同じ失敗をする誰か」への先送りでしかない。

マネージャーがメンバーの「上位互換」として全部正解を持っている、という前提に立つと、失敗の共有は「できない自分を見せること」になってしまいます。私たちはそうは考えていません。マネージャーも普通に間違えるし、得意・不得意がある。だからこそ弱みを見せ合い、役割分担でチームとして勝つ。失敗をオープンにできるのは、その世界観があって初めて成り立つのだと思っています。

失敗を「Slackに流す」とは、具体的にどういうことか

「失敗をSlackに流す」と言うと、少し乱暴に聞こえるかもしれません。実際にやっていることは、もっと地味で具体的です。

私たちは、うまくいかなかったことや読み違えたことを、専用の場所に短いテキストで書き残す習慣を大切にしています。完璧なふりかえり資料を後から作るのではなく、起きたその場で、走り書きでいいから共有する。フォーマットは決して重くしません。重くすると、人は書かなくなるからです。

共有のときに私たちが意識しているのは、おおむね次のような要素です。

  • 何が起きたか(事実をシンプルに。脚色しない)
  • どう影響したか(誰に・どこに波及したか)
  • 今どう対処しているか/したか
  • 次に同じことを防ぐために、何を変えるか・何を学んだか

この順番には意図があります。最初に「事実」を置くことで、感情や自己弁護を脇に置いて話せる。最後に「学び」で締めることで、共有が反省会ではなく前進のための行為になる。犯人探しをするための投稿ではなく、チームの財産を一つ増やすための投稿にする——そこをチーム全体で外さないようにしています。

バイリンガル環境なので、共有は日本語のときも英語のときもあります。言語が混ざるからこそ、誰でも理解できるように事実を簡潔に書く力が自然と鍛えられる、という副次的な効果もあると感じています。長い言い訳より、短い事実のほうが国境を越えやすいのです。

大事なのは、これが「制度」ではなく「空気」になっていることです。誰かに強制されて報告しているのではなく、出した方がチームのためになるし、自分も楽になる、と全員が体感している。その感覚が回り始めると、失敗共有は義務ではなく、ごく自然な日常になります。

多国籍・バイリンガル環境が、自己開示を後押しする

自己開示の文化は、AZOOの多国籍・バイリンガルな環境と切っても切り離せません。

国籍も母語もバックグラウンドも違うメンバーが集まると、「言わなくても分かる」が通用しません。日本のビジネス慣習だけを前提にしていると、海外在住のメンバーには伝わらない。逆に、英語だけで進めると日本語話者が置いていかれる。つまり、私たちは構造的に「曖昧なまま察し合う」ことができないチームなのです。

この「察せない」という条件は、一見ハンディのように思えますが、自己開示の観点ではむしろ追い風になります。前提が共有できないからこそ、自分の状態・自分の理解・自分のつまずきを、言葉にして相手に渡すしかない。「ここが分からない」「ここで詰まっている」「これは自分のミスだった」と明示することが、チームを回す前提条件になります。

多様なチームでは、沈黙は配慮ではなく、情報の欠落になる。だから私たちは、分からないことや失敗を口に出すことを、礼儀として扱っている。

時差を活かした非同期の働き方も、この文化を支えています。海外在住のメンバーがいると、リアルタイムで全員が揃わない時間帯が必ずあります。だからこそ、テキストで状況をきちんと残すことが重要になる。誰かが寝ている間に物事が前に進むためには、「今こうなっている」「ここでつまずいた」を非同期で読める形にしておく必要があるのです。失敗の共有も、その延長線上にあります。

文化や言語の違いは、ときに誤解も生みます。けれど私たちは、その誤解すらオープンに「いま噛み合っていない気がする」と言い合える関係を目指しています。違いを隠して波風を立てないより、違いを開いて理解し合うほうが、結果的にチームは強くなる。多国籍であることは、私たちにとって自己開示を選ばざるを得ない理由であり、同時に最大の財産でもあります。

心理的安全性は「優しさ」ではなく「設計」だと考える

「失敗をオープンにできる」と聞くと、ふわっと優しい職場を想像されるかもしれません。けれど私たちは、心理的安全性を「みんなが優しいから成立するもの」だとは考えていません。むしろ、意識的に設計し続けないと簡単に壊れるものだと捉えています。

心理的安全性とは、対人関係のリスクを取っても罰せられない、と感じられる状態のことです。つまり「失敗を言っても、無能だと見なされたり責められたりしない」という確信です。これは放っておいて自然に生まれるものではありません。たった一度、誰かが失敗を共有したときに犯人探しや吊し上げが起きれば、その瞬間に全員が口を閉じます。安全は、積み上げるのは遅く、壊れるのは一瞬なのです。

だからこそ、私たちは日々の小さな反応を大切にしています。

  • 失敗が共有されたら、まず「出してくれてありがとう」と返す
  • 「なぜできなかったのか」より「次にどうするか」に話を向ける
  • 人ではなく仕組みを問題にする(誰が悪いか、ではなく、どこに穴があったか)
  • マネージャー自身が、自分の失敗や迷いを率先して開示する

最後の一点は特に重要だと考えています。マネージャーが完璧な顔をして、自分の失敗を一度も見せなければ、メンバーに「弱さを見せろ」と言っても説得力がありません。上の人が先に弱さを開く。それが、安全を設計するうえでの最初のドミノだと思っています。

誤解してほしくないのは、心理的安全性は「何をしても許される」「ぬるい」という意味ではないということです。むしろ逆です。安全だからこそ、率直なフィードバックや厳しい指摘も、人格攻撃ではなく前進のための材料として受け取れる。安全性と高い基準は、トレードオフではなく両立するもの——私たちはそう信じて、その両方を同時に追いかけています。

マネージャーは「上位互換」ではなく、弱みを見せ合う仲間

この記事を読んでくださっている方の中には、「マネージャーはメンバーの上位互換ではない」という考えに強く共感する方がいるかもしれません。私たちもまさに、そう考えています。

旧来の発想では、マネージャーはメンバーより仕事ができて、より多くを知っていて、最終的にすべての答えを持っている存在、とされがちです。けれど、変化の速いスタートアップで、しかも多国籍・多専門のチームでは、一人がすべての領域で最も優れているなんてことは、現実的にあり得ません。

私たちが目指すマネージャー像は、答えを全部持っている人ではなく、チームの強みと弱みを正しく把握し、適切に役割を分担し、チームとして勝てる状態をつくる人です。自分の不得意を隠さず「ここは自分より◯◯さんのほうが詳しい」と言える。自分の判断ミスを「あれは自分の読み違えだった」と認められる。そういう開かれた姿勢こそが、チーム全体の自己開示を引き出します。

弱みを見せられるリーダーのもとでは、メンバーも安心して弱みを見せられる。強がるリーダーのもとでは、全員が強がるしかなくなる。

この考え方は、私たちが大切にしている「アンラーン(unlearn)」——いったん身につけた成功体験ややり方を、必要に応じて手放し、学び直すこと——とも深くつながっています。過去のやり方に固執せず、「自分はこれを間違えていたかもしれない」と認められること。それ自体が一つの自己開示であり、強さです。経営陣との距離が近い私たちの環境では、こうしたアンラーンの姿勢が役職に関係なく交わされ、年次や肩書きよりも「いま何を学び直せるか」が尊重されます。

役割分担でチームとして勝つ、という発想に立てば、誰かが弱みを開示することは、チームにとって「弱点が見えた」というプラスの情報になります。見えていれば補い合えるからです。隠された弱みだけが、チームを静かに蝕む。だから私たちは、弱みの開示を歓迎します。

自己開示文化が「向く人」と「しんどい人」

誠実にお伝えしたいことがあります。この自己開示の文化は、すべての人にとって心地よいわけではありません。入社後にギャップを感じてほしくないので、正直に書きます。

まず、この環境がフィットしやすいのは、こういう方だと思っています。

  • 成功も失敗も、隠さずオープンに開示することに抵抗が少ない
  • 「分からない」「間違えた」と言うことを、弱さではなく前進の一歩だと捉えられる
  • マネージャーやメンバーと、上下ではなくフラットに弱みを見せ合いたい
  • 過去のやり方を手放して学び直す(アンラーンする)ことを面白がれる
  • 多国籍・バイリンガルな環境で、言葉を尽くして伝える努力を厭わない

一方で、最初は戸惑うかもしれない方もいます。失敗を見せること自体に強い抵抗がある方、評価のために良い面だけを見せたいと考える方、あるいは「察してほしい」「言わなくても分かってほしい」という期待が強い方にとっては、この文化は最初しんどく感じられるかもしれません。

ただ、これは「向いていないから来ないでください」という話ではありません。私自身、最初から自己開示が得意だったわけではありません。失敗を出すのは、慣れるまで勇気がいります。けれど、出した失敗が責められるどころか感謝され、チームの学びに変わっていく体験を何度かすると、不思議と恐怖は薄れていきます。文化は、入る前の性格より、入った後の体験で育つ部分も大きいのです。

だからもしあなたが「自己開示には惹かれるけれど、本当にできるか不安だ」と感じているなら、それはむしろ自然な感覚だと思います。完璧に開示できる人を求めているわけではなく、開示していこうとする方向に共感できるかどうか——私たちが見ているのは、そこです。

カルチャーフィットを、入社前に確かめるために

採用担当として、私はカルチャーフィットを「入社してから分かるもの」にしたくありません。お互いにとって不幸だからです。だから選考の過程で、できるだけ私たちの素のカルチャーをお見せするようにしています。

面談では、良い話だけをしません。私たちが過去にどんな読み違えをしてきたか、いま何に苦戦しているか、どこがまだ整っていないかも、率直にお話しします。きれいに飾ったAZOOではなく、ありのままのAZOOを見てもらった上で、「ここで働きたい」と思っていただけるかを一緒に確かめたいからです。これも一つの自己開示だと考えています。

もしあなたが、次のような問いに「YES」と感じるなら、私たちとは良い相性かもしれません。

  • チームの誰かが失敗を共有したとき、責めるより先に「ありがとう」と思えるか
  • 自分のつまずきを、隠すより共有したほうが楽だと感じられるか
  • マネージャーが弱みを見せることを、頼りなさではなく誠実さだと受け取れるか
  • 国籍や母語が違う相手にも、言葉を尽くして伝え合いたいと思えるか

私たちは、宿泊業という人手不足とDXの課題が大きい領域で、まだ世の中にないプロダクトをつくっています。インバウンドの広がりとともに、バーティカルSaaS(特定業界に特化したSaaS)の可能性は大きい。けれど、その挑戦は決して平坦ではありません。だからこそ、失敗をオープンにし、弱さを見せ合い、役割分担でチームとして勝つ——この文化が、私たちの最大の武器だと信じています。

失敗もSlackに流せる仲間を、私たちは探しています。あなたの「うまくいかなかった話」を、いつか京町家のオフィスで、あるいは画面越しに、安心して聞かせてもらえる日を楽しみにしています。

FAQ

よくある質問

Q失敗を共有したら、評価が下がりませんか?
A

下がりません。むしろ私たちは、失敗を早く・オープンに共有する行動そのものを、チームへの貢献として前向きに捉えています。評価で見ているのは「失敗しなかったか」ではなく、「失敗から何を学び、どうチームに還元したか」です。隠された失敗のほうが、結果的にチームへのダメージが大きいと考えています。

Q「失敗をSlackに流す」のは義務ですか?決まったフォーマットがありますか?
A

重い義務でも、厳格なフォーマットでもありません。フォーマットを重くすると人は書かなくなるので、あえて軽くしています。何が起きたか・どう影響したか・どう対処したか・次にどう活かすか、を短く書ければ十分です。完璧な事後資料より、その場の走り書きの共有を歓迎します。

Q日本語が得意でない(または英語が得意でない)のですが、自己開示についていけますか?
A

大丈夫です。バイリンガル環境なので、共有は日本語のときも英語のときもあります。むしろ言語が混ざるからこそ、長い言い訳より短い事実を簡潔に伝える力が育ちます。完璧な語学力よりも、伝わるまで言葉を尽くそうとする姿勢を大切にしています。

Qマネージャーが弱みを見せるというのは、頼りないということでは?
A

私たちは逆だと考えています。マネージャーをメンバーの「上位互換」ではなく、チームの強み・弱みを把握して役割分担で勝たせる存在だと捉えているからです。自分の不得意や判断ミスを開示できることは、頼りなさではなく、チーム全体の自己開示を引き出すための誠実さであり強さだと考えています。

Q自己開示が得意ではありません。それでも応募できますか?
A

もちろんです。最初から自己開示が得意な人を求めているわけではありません。失敗を出すのは慣れるまで勇気がいるものですし、それは自然なことです。出した失敗が責められず学びに変わる体験を重ねるうちに育っていく部分も大きいので、「開示していきたい」という方向に共感できるかどうかを大切にしています。

Q心理的安全性が高い=ぬるい職場ということですか?
A

いいえ、むしろ逆です。安全だからこそ、率直で厳しいフィードバックも人格攻撃ではなく前進の材料として受け取れます。私たちは心理的安全性と高い基準を、トレードオフではなく両立すべきものと考えています。安全は優しさで生まれるのではなく、日々の反応や仕組みで意識的に設計し続けるものだと捉えています。

まずは、はなしましょう。

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