"提案する側"から"作る側"へ ― ホテル運営を現場からAIで変革する、デプロイメント・ストラテジストという仕事
ホテル運営をAIで変革する、京都発のスタートアップ・AZOOが、2024年に新設した職種がある。その名は「デプロイメント・ストラテジスト(DS)」。一言で言えば、ホテル経営をAIで変革する、ゲームチェンジャー。 ── 提案で終わらせず、AIを現場で動かし切る人だ。
「いい提案ができた。でも、それが実際に動いているところを見届けられない。」
コンサルティングファームやエンタープライズSaaSのカスタマーサクセスを経験した方なら、この感覚を一度は持ったことがあるのではないでしょうか。そういう人にこそ、この記事を読んでほしいと思って書いています。
現在、AZOOには専任のデプロイメント・ストラテジストは1人もいません。だからこそ、「なぜこの職種を新設するのか」「1人目は何をするのか」を、設計思想から誠実にお伝えしたいと思います。
事業の方向性に共感し、ロールの意義を理解した上で、「自分ならこう貢献できるかもしれない」と感じてくださった方に、ぜひ一度お話しする機会をいただきたい。それが、この記事を書いた理由です。
ホテルに「売れていない部屋」が溢れている、という現実
まず、事業の背景からお話しします。日本では民泊や簡易宿所を含め、宿泊施設が年間2,000件を超えるペースで増加しています(観光庁「宿泊旅行統計調査」)。訪日外国人数は2025年に約4,268万人と過去最高を更新し(JNTO)、観光産業は本格的な成長期を迎えています。
一方で、ホテル・旅館の約6割が人手不足を訴え(帝国データバンク調べ、2025年1月)15万人の労働人口不足だとも言われています。スタッフを確保できずに客室を売り止めせざるを得ない施設が全国で相次いでいます。「需要はある。しかし、受けきれない」——これが宿泊業界の構造的な現状です。
AZOOが取り組むのは、この構造そのものをAIで変えることです。ホテルOSシステム「WASIMIL」と、AIエージェント化の「Kanko AI」を両輪に、「データ×AIで観光立国をする」というミッションを推進しています。
ただし、ここで明確にしておきたいことがあります。プロダクトを「作る」だけでは、このミッションは達成できません。
優れたAIプロダクトがあっても、ホテルの現場に根付かなければ意味をなさない。
業務フローに乗らなければ、スタッフは使わない。使われなければ、データは蓄積されない。データがなければ、AIは精度を高められない。この「最後の1マイル」を解くために、AZOOはデプロイメント・ストラテジストという職種を設計しました。
「FDEモデル」をホテル産業に持ち込む
AnthropicやOpenAIが、自社AIを大企業へ届ける際に実践している「Forward Deployed Engineer(FDE)」というアプローチをご存知ですか。エンジニアがお客さまの現場に寄り添い、プロダクトを日々の業務フローに自然に溶け込ませながら、現場で感じたリアルな声をプロダクトへ還元していく、そんな考え方です。
最近は「FDE」を名乗るポジションも少しずつ増えてきましたが、実際のところ「導入サポート担当」「設定代行スタッフ」の役割にとどまっているケースも、まだ多いのが現状です。では、AZOOのデプロイメント・ストラテジスト(
DS)はどこが違うのでしょう。
正直にお伝えすると、その違いは「経営の意思決定の場に、いっしょに踏み込むかどうか」にあります。
DSは、ホテルの現場で運用を支えるだけでなく、「なぜ人手不足が起きているのか」「どの業務をAIに任せれば収益性が上がるのか」という経営課題の構造を読み解き、AIを活用したソリューションをみずから設計・実装・検証していくポジションです。
プロダクトがまだ答えを持っていない問いに、現場の方々と一緒に向き合いながら、答えをかたちにしていく。それがAZOOの考えるDSの姿です。 もちろん、決まった型はまだありません。
1人目のDSには、この役割の定義づけからいっしょに考えてほしいと思っています。それは「整っていない」ということではなく、「今この瞬間だからこそある、大きな裁量」だと捉えています。
DSの仕事を4つに分類する
| 領域 | 主な業務内容 |
|---|---|
| ①導入設計 | ホテル・宿泊施設へのWASIMIL導入にあたるオンボーディング設計。施設の運用フローをヒアリングし、最適な初期設定・移行計画を策定する |
| ②カスタマーサクセス | 導入後の活用定着を支援。KPIモニタリングや定期レビューを通じ、施設ごとのROI最大化を伴走する |
| ③プロダクトフィードバック | 現場の声をプロダクトチームへ橋渡し。ユースケースを構造化し、機能改善・新機能開発の優先度づけに貢献する |
| ④展開・横展開戦略 | 成功事例をパターン化し、新規施設・エリアへのスケールアウトを推進。導入ノウハウをドキュメント化して組織知に変換する |
入社後90日で何をするか
型がない、1人目である──それが不安要素になりうることは、私たちも十分に理解しています。だからこそ、入社後最初の90日間をどのように過ごすか、そのイメージを具体的にお伝えします。
| 期間 | テーマ | 主なアクション |
|---|---|---|
| 0〜30日 | 現場観察と事業理解 | 京都・下京区の京町家オフィスに出社し、WASSIMILとKanko AIの機能・設計思想を理解するところから始めます。プロダクトチームのミーティングに同席し、導入済みホテルへの同行訪問を通じて、現場の「生の状態」を自分の目で確認します。 |
| 30〜60日 | 初期導入案件への参加 | 既存の導入支援に入り込みます。「型がない」からこそ、「どんな型があれば次が速くなるか」を問い続けながら動く期間です。現場の課題とプロダクトのギャップを言語化し、プロダクトチームへのフィードバックを始めます。 |
| 60〜90日 | ソリューション仮説の立案 | 自分が担当する施設・チェーンの課題を経営視点から構造化し、「この3ヶ月でどんな変化を作れるか」の仮説を経営陣にプレゼンします。私(横田)との距離はフラットで、週次で直接対話できる体制を整えています。 |



