なぜ私たちは、ホテルの"現場"まで行ってAI導入を支援するのか ― データで日本を観光立国するための、AZOOの選択
100室あるホテルで、80室しか売れない。 物理的には存在するはずの20室が、誰にも使われないまま夜を迎える——これは一つの施設だけの話ではなく、日本中のホテルで毎晩くり返されている現実です。需要が不足しているわけではありません。予約を受け付けるための体制が、人とシステムの両面で需要に追いついていないのです。
私が代表を務める株式会社AZOO(プロダクト名:WASIMIL)は、「ホテル運営をAIで変革する、Hotel Techスタートアップ」です。この一文を読んで「よくあるSaaS会社の話でしょ」と思った方には、ぜひ最後まで読んでいただけたら嬉しいです。
私たちが選んだのは、プロダクトを渡して終わりにしない道です。ホテルの現場に入り込み、運営フローを再設計し、AIが実際に動き続けるところまで伴走する──そこまでやらなければ、日本の観光産業は変わらないと確信しています。
ホテルは、"売れるはずの部屋"を手放してしまっている
日本の宿泊業の市場規模は年々拡大し、毎年500施設以上が新規開業しています。インバウンドの波は続き、観光需要は旺盛です。それでも現場に行くと、フロントスタッフが電話とFAXとExcelを同時に操作しながら、顔を上げる余裕もなく働いている光景に出会います。
なぜこうなるのか。答えはシンプルで、ホテルの運営システムが「機能ごとに別々のツール」で成り立ってきたからです。予約管理、客室管理、収益管理、顧客情報──それぞれのシステムがデータを抱え込み、連携しません。人が橋渡しをするしかなく、人手が足りなければ業務が止まります。結果として、売れるはずの部屋が売れないまま終わってしまいます。
重要なのは、これが単なる「働き方の問題」というより、「産業の構造そのものが抱えてきた課題」だということです。さまざまなツールが混在し、データがバラバラに管理されてきたことが、ホテルの現場に長年の非効率を生んできました。
なぜ今、「ホテルOS」がAIによる宿泊業の転換点になるのか
私たちが開発してきた「WASIMIL」は、15以上の機能を一つのプラットフォームに統合したホテルOSシステムです。予約から客室管理、収益最適化、顧客データの蓄積まで、ホテル運営に必要な情報が一箇所に集まります。単機能ツールの乱立に終止符を打ち、ホテルを「データが一本筋で流れる状態」にすることが、WASIMILの存在意義です。
そして今、この統合データ基盤が決定的な意味を持つ転換点が来ています。AIエージェントの登場です。
AIは、バラバラなデータからは学べません。統合されたデータ基盤があってはじめて、需要予測、動的な料金設定、スタッフ配置の最適化といった業務をAIが担えるようになります。逆にいえば、データが分断されたままのホテルにAIを導入しても、うまく機能しません。WASIMILが作ってきた統合基盤は、AI時代においてこそ、最大の競争優位になると思っています。
私たちは「Kanko AI」というホテル特化のAIプロダクトも展開しています。WASIMILで統合されたデータを土台に、AIが実際の業務判断を支援します。
良いプロダクトだけでは、ホテルは変わらない
正直にお伝えします。WASIMILを導入したからといって、それだけでホテルが変わるわけではありません。 長年の運営フローは容易には変わらず、スタッフに染みついた習慣は新システムを「入れた」だけでは変わりません。
データが蓄積されても、意思決定に活かす文化が根付いていなければ宝の持ち腐れです。AIが動く環境を整えても、運用が定着しなければ成果には結びつきません。
私たちがたどり着いた答えは、「プロダクトと現場伴走をセットにする」ことです。
参考にしたのは、AnthropicやOpenAIが実践するFDE(Forward Deployed Engineer)モデルです。優れたAIプロダクトを持つ企業が、顧客の現場に人を送り込み、実装と定着を徹底支援するあの発想を、ホテル産業に特化して展開しています。私たちはこれを「ホテル運営AX化パートナー」と呼んでいます。
現場知見が、次のホテルを速く変える
この伴走モデルには、もう一つの狙いがあります。現場で得た知見を、プロダクトに還元することです。
ホテルの現場に入ると、開発チームの予想を超える「実際の使われ方」に出会います。スタッフがどこで戸惑うか、どんな業務フローが現実には存在するか、AIのアウトプットのどこが現場では使いにくいか──これらはプロダクトだけを見ていては分かりません。
現場で得た課題と改善点をWASIMILとKanko AIへフィードバックし、次の導入がより速く、より効く形に磨き上げていきます。1施設の成功をチェーン・複数施設へ展開できる「型」に昇華し、属人的な導入を、再現性のある仕組みへ。この循環こそが、AZOOの事業の核だと考えています。
良いプロダクトと良い現場伴走が噛み合うことで、次のホテルはより速く変われます。
それが積み重なると、産業全体のスピードが上がります。ホテルの人手不足が解消され、より多くの客室が売れるようになり、観光経済が動く──「データ×AIで観光立国をする」という私たちのミッションは、この循環の延長線上にあります。
京都の京町家から、世界水準のチームで
私たちのオフィスは、京都・下京区にある京町家をリノベーションした空間です。格子窓から自然光が差し込む和の空間に、MacBookとホワイトボードが並んでいます。東京にサテライトオフィスも予定しています。本拠地はこの京町家です。
チームは多国籍・バイリンガルです。日常会話も会議も、日本語と英語が自然に混ざります。
京都という場所に根ざしながら、グローバルスタンダードな環境で仕事をする──この組み合わせは、AZOOならではのものだと思っています。
この環境で「観光立国」という構想を動かすには、当然ながら一社・一チームでは実現できません。事業のフェーズが上がるにつれ、多様なスキルと意志を持つ仲間が必要になってきます。
この構想を、一緒に作る人を探しています
私たちが今探しているのは、特定のスキルセットを持つ「即戦力」だけではありません。事業の筋を信じ、自分の力でその筋を太くしていける方です。
まずは現場でホテルの変革を主導する人材が必要です。「デプロイメント・ストラテジスト」という職種で、ホテルへの導入支援から経営パートナー化まで、現場の変革を主導していただく役割です(詳しくは職種定義ページでご確認いただけます)。コンサルティングやカスタマーサクセスの経験がある方には、提案で終わらせず実装まで責任を持つ環境が、キャリアの次のステージになるはずです。
顧客の成功を設計する人材も必要ですし、AIとプロダクトを磨くエンジニアも、市場を切り拓く営業・マーケターも。職種は問わず、「ホテルをAIで変える」という構想の意義を感じてくださる方と話したいと思っています。
正直にお伝えすると、組織はまだ小さく、型もこれから作るフェーズです。整ったオペレーションを望む方には向かないかもしれません。でも、事業の設計から自分が関われる希少性は、このフェーズにしかありません。数年後に「あの時期にAZOOにいてよかった」と思える経験が、きっとここで積めると信じています。



